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展示関連講座「比べる視点で地域映像を愉しむサロン」,巡回展「探してみよう!地域のお宝」展の開催〔士別市〕

私たち研究グループが昨年から準備してきた道北巡回展「探してみよう! 地域のお宝」が士別会場からはじまりました。士別市に続いて名寄市北国博物館、美深町文化会館、美瑛町郷土学館での巡回展示が予定されています。

ここでは士別市で開催された展示と映像サロンを振り返ってみたいと思います。


展示関連講座「比べる視点で地域映像を愉しむサロン」,士別市民文化センター


 関連講座の映像サロンは、8月7日(土)に士別市民文化センター1階研修室で開催されました。展示に関連するアーカイブ映像を参加者のみなさんと見ておしゃべりをする、という内容で、巡回展の構想段階からわたしたちも楽しみにしていたものです。当日は関係者を含めて15名ほどの参加がありました。

 サロンの運営は、開催館の士別市立博物館にお膳立ていただきました。企画者が所属する博物館、つまり自館開催の場合は、会場準備からイベントの記録までを併行して企画を実施するため、企画の中身に向き合う時間は少なくなってしまいがちですが、今回は参加者のみなさんと一緒にじっくり映像を愉しむことができました。


 サロンは、参加者全員の自己紹介に続いて、3つのテーマに沿って地域映像を視聴しました(地域の祭りの映像3本、農作業の映像2本、高齢者に関する映像3本、合計8本)。

サロン参加者のみなさんと一緒に地域映像を視聴します。〔撮影:士別市立博物館〕


 地域の祭りのテーマでは,1972年に撮影された「士別神社例大祭」,1950年代後半に士別で撮影された「さくらまつり」,2000年に士別市朝日で撮影された「朝日神社例大祭」の3本の映像を視聴しました。撮影時期・場所は異なるものの、いずれも士別地域の祭りに関する映像です。来場者のみなさんからは、当時の祭りの様子だけでなく,最近の祭りの様子をお聞きすることができました。半世紀以上前のモノクロサイレント映像であっても、駅舎や大通り、神社といった現在も継承されている町の様子と照らし合わせれば映像をより身近に感じられますし、子供の頃にさくらまつりに参加した方の語りを聞くと、生き生きとした祭りの賑わいを映像からさらに感じ取ることができます。映像に写る見物客やバス車列の多さに驚いたという声も聞かれました。


映像サロンで視聴した地域映像


 続く農作業のテーマでは、種籾を水田に直播する(通称タコ足)に関する2つの映像を視聴しました。このテーマでは、二つの映像の違いをもとに、直播する際に水田にガイドとして張る水縄に関する疑問や想像が広げられること、映像中でのタコ足を用いた作業は女性の方が作業スピードが速いこと(実際に女性が担当することが多かった作業のようです)などを紹介しました。いくつかの映像を見比べたり、映るされた事象を見比べることで気づくことがありそうです。

「タコ足と水縄」映像サロン解説スライドより。右下に水縄が映る。


 最後の「高齢者とは」というテーマでは、過去の記録映像に写される高齢者施設とともに、企画メンバーが昨年撮影した「昔の高齢者とは」に関する聞き取り映像を視聴しました。わたしたち研究グループの研究タイトルでもある「幸せに生きること(ウェル・ビーイング)」について、参加者から示唆に富むご意見を数多く頂くことができました。日常生活を味わいながら送ること、(良い意味で)人の目を気にせずに自分のしたいことをすること、食べることに苦労しなくなったからこそそれらが可能になった、などなど。

映像視聴後におしゃべりをします。映像や被写体について色々な情報を教えていただく機会にもなります。〔撮影:士別市立博物館〕


 おしゃべりが盛り上がり、予定していた終了時間をこえてしまいました。サロン終了後には参加者のみなさんにアンケートにご協力いただきました。内容を分析するとともに、今後の映像サロンの運営につなげていきたいと思います。

実施後のアンケート(部分)


視聴映像リスト

《緑豊かな町》士別,1972年「士別神社例大祭」,士別市立博物館蔵

《伸びゆく士別》士別,1950年代後半「さくらまつり」,士別市立博物館蔵

《水とみどりの里》朝日,2000年「朝日神社例大祭」

《稲物語》風連町,1992年「直播栽培・タコ足」名寄北国博物館蔵

《馬耕時代の農作業》名寄日彰地区,1980年「タコ足」名寄北国博物館蔵

《緑豊かな町》士別,1972年「市営老人ホーム」士別市立博物館蔵

《水とみどりの里》朝日,2000年「美土里ハイツ」士別市立博物館蔵

《昔の高齢者とは》士別市朝日/名寄市智恵文での聞き取り映像,2020年



展示:「探してみよう!地域のお宝」展,士別市立博物館

 士別市立博物館に入ると、右手に文化史、左手に自然史の展示が展開されます。その分かれ目の一番目立つ場所に本巡回展の展示スペースが設けられました。士別博物館所蔵資料から選りすぐった展示資料と、私たちの用意した解説パネルとサイネージ映像が立体的に配置されました。パネル・映像と実物資料はともすれば主・従の関係になりがちですが、士別博物館の学芸員の方の手によりそれぞれが独立しながらも一体として成立しています。パネルや映像を見た後で、関連する実物資料を見たり、壁に演示された実物資料のかたちや素材の面白さに惹きつけられた後にパネルや映像を見る、という楽しみ方ができました。この展示パネルにこの資料を組み合せたのか、という協働作業の楽しみもありました。展示会場では、タコ足を見に来たと話す、映像サロンに参加していた少年と一緒に実物資料を見る機会にも恵まれました。


展示会場全景と展示テーマ「冬山造材の技術」部分


 士別市立博物館では、常設の文化史・自然史展示に加え、美術の展示やさまざまな企画展が展開され、博物館の周りを囲む自然環境を活かして観察会なども活発に行われています。私が博物館を訪問した際には、博物館設立40年の企画展が開催されていました。   

 今回の映像サロンで視聴した記録映像もこうした長年の博物館(前史としての郷土資料館、あるいは公民館)の活動の中で収集・保存されてきたものであり、歴代の館員や、博物館を一緒に盛り立ててきた地域の方の協働作業によるものです。地域に残るアーカイブ映像は言うまでもなく地域の宝ですが、その背後をひとつひとつ読み解き,新たに発見したことをみなさんで愉しんでいくことでさらに輝きを増すのではないでしょうか。

16㎜カメラ。映像サロンで視聴した映像の何本かを撮影したものと考えられます。〔士別市立博物館常設展示〕


 士別博物館での本展示は2021年7月24日から8月22日までの約1か月間開催されました。ご協力いただいたみなさまに感謝申し上げます。


※コロナ禍による緊急事態宣言に伴い、名寄市北国博物館で予定されていた展示と関連講座は残念ながら中止となりました。

文責:山下俊介(北海道大学)



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